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測定試薬解説 LDL−Cについて

LDL−コレステロール測定用
「セロテック」
LDL−L

 

 
1.はじめに  

「セロテック」LDL-Lは高分子リン化合物と界面活性剤の組み合わせにより、検体中のLDL-Cを直接測定する選択的阻害法を採用しています。
LDL-Cの測定は米国疾病管理センター(CDC)のβ-Quantification法(BQ法)が基準法です。
しかし、日常検査法に使用するにはBQ法は操作が煩雑なため、血清中のLDL-Cを直接的に測定できるホモジニアス法が普及しています。当社製品LDL-LはBQ法による認証試験を受け、精密さに関する認証基準をクリアし、その正確性も確認され認証を継続して取得しています。
しかしながら、各社試薬間において、中間比重リポ蛋白(IDL)やLipoprotein-X(Lp-X)などの特殊なリポ蛋白が増加した検体での測定値差が問題となっています。(文献1)

上記のような内容から、当社製品における反応性に関して記載します。

 

 
2.当社製品について  

◆測定原理

当社製品「セロテック」LDL-Lの測定原理を模式図で記載します。
 
 

◆LDL−C直接法は何を測定しているのか?

LDL-Cの測定意義は動脈硬化性疾患の診断、治療、予防に重要な情報を提供します。
しかし、LDL-Cだけが動脈硬化性疾患の危険因子ではなく、比重ではLDL画分には属さないリポタンパクでも危険因子となるものが存在します。
また、逆にLDL画分に属するものの、動脈硬化性疾患の危険因子ではないリポタンパクも存在しており臨床的意義の観点から測定対象の見直し・明確化が必要とされています。
現時点での基準法とされるBQ法では1.006<d<1.063のリポ蛋白をLDLとしていることから、比重の分類からすれば、IDL-Cを含んだものがLDL-Cとされています。
また、胆汁うっ滞を示す患者血清中にはアポリポ蛋白Bを有しない異常リポ蛋白Lp-Xが高頻度に出現し、このLp-Xも超遠心法ではLDL相当の比重(1.006<d<1.063)を有するためLDL分画に分離されます。これらのIDLやLp-Xなどの、いわゆる「狭義のLDL」以外のリポ蛋白との反応性が各試薬間で異なるため測定値差を生じ、混乱を招いているのが現状です。
なお、Lp-Xの扱いについては文献1)では測定しない方が良いとされており、当社製品LDL-LではLp-Xについてはほとんど反応しないことが文献1)に示されております。
 
◆各画分との当社製品LDL−Lとの反応特異性
 
 
筑波臨床化学セミナー(TSCC2008.7.12-13抄録より抜粋 一部改変)  
    
各リポタンパクとの反応特異性を評価する際、HPLC法によって「リポタンパク粒子の大きさ」に基づいて分画した画分との反応性を示す場合が多く見られます。しかし、これでは分類の基準である「比重」とは異なる原理に基づくものですので、正確な評価ができません。
さらに、HPLC法での評価の盲点は、LDLのピークが一つだからといって、特異的な測定を保証するものではないことです。
一般に、LDLのピークを示すクロマトグラムが総コレステロールのクロマトグラムに一致しておりません。
これは、LDLのピークに存在するLDLと完全には反応していないことを示しているのです。
すなわち、LDL粒子のなかで、反応しないものが存在していることを示しています。
したがって、LDL測定用試薬の反応性は、脂質異常症ではない血清から比重で分画されたリポタンパクを用いて評価するのが正しい方法です。
HPLC法は、正常なリポタンパク組成なのか、そうではなく異常な組成であるのかを鑑別するのには役立ちます。

 試薬の特異性を評価する際に、よく「TGの影響」という表現が用いられますが、TG濃度だけが異常であり、その他のリポタンパクには異常がない場合に限って、この表現は意味を持ちます。
実際にはTGの高い検体の多くは、リポタンパク組成が正常な組成と異なり、異常なリポタンパクが出現しているので、これらの異常なリポタンパクとの反応性を含めた測定結果であることを十分理解して、結果を解釈する必要があります。


 

 
3.正確さの確認とトレーサビリティ  

◆CDC BQ法へのトレース状況について

LDL-Cの測定法は、米国疾病予防センター(CDC)のβ-Quantification法(BQ法)が国際基準法です。
大阪府立健康科学センターにおけるBQ法の認証試験結果を以下に示します。大阪府立健康科学センターはCDC/CRLMNラボラトリーネットワークにおける日本で唯一の認証機関で、LDL-C測定試薬の認証を行っており、当社は継続してその認証を受け一般的な正常検体では正確さが確認されています。
また、当社製品LDL-LはこのBQ法にトレースしています。


 
2008年に実施のCDC認証試験の結果です。  
 

 
4.直接法とFriedewald式との関係  

Friedewald式(F式)はLDL-Cの直接法が開発される以前から、LDL-Cを計算で求める方法として普及してきました。この計算式ではTCHO、HDL-C、TG値からLDL-Cを計算で求めることができます。

LDL-C(mg/dL)=TCHO(mg/dL)−HDL-C(mg/dL)−1/5TG(mg/dL)

◆当社試薬とF式との関係(例示)

筑波臨床化学セミナー(TSCC)2008抄録では990名の健診受診者のうち、TG濃度が400mg/dL以下である健診受診者血清982検体を用いて、LDL-C測定直接法試薬での測定値をF式での計算値と比較しています。
当社測定試薬の場合、相関係数が0.987、回帰直線がy=−3.6+0.93x(X軸は直接法試薬での測定値)と良好な結果を示し、このような健診受診者血清では直接法の測定値はF式での測定値によく一致することが示されています。(文献2)
 
 
   (筑波臨床化学セミナー(TSCC)2008.7.12-13抄録より抜粋)  

しかしながら、TG濃度が高い検体では、リポタンパクの組成や粒子サイズが変化しており、LDL濃度は低値を示す一方で、IDL-Cや、より粒子の大きい異常なリポタンパクが増加します。
400mg/dL以上のTG濃度が高い検体でのF式との相関性を以下に記載します。
ただし、F式は食事の影響を受けやすい上、TG値が400mg/dL以上及びV型高脂血症では使用できないとされています。
 
   
TG値 400mg/dL以上検体の場合  
 
TG値400mg/dL以上の検体においては前述した記載のとおり異常なリポタンパクの増加が認められるため、F式では算出対象外になっており、上記グラフのように本試薬(直接法)測定値と大きな差異が見られ、TG値400mg/dL以下の検体でのデータに比べて相関性は劣ります。
 
◆食餌の影響

 F式と当社製品LDL-L直接法を用いた場合の食餌の影響を記載します。
 
 
LDL-C直接法では食後の経時的な変動幅は小さく、F式の値では中性脂肪の変動に起因すると考えられる変動幅が大きく認められました。(社内データ)
 

 
5.異常検体の測定結果例  

◆胆汁うっ帯患者血清のLDL−C測定値と脂質組成(文献より)

胆汁うっ滞患者の血清では、そのほとんどでリン脂質(PL)、遊離型コレステロール(FC)の著しい上昇が認められます。また、LDL相当の比重(1.006<d<1.063)を持つ異常リポ蛋白Lp-Xが観察される場合もあり、LDL-Cホモジニアス法間の乖離の一因として報告されています。下記に電気泳動でLp-Xの存在が認められた胆汁うっ滞症例におけるLDL-C試薬測定法間の乖離と血清脂質の比較例を示します(文献1より)。
 
 
(当社製品F法 文献1より引用)  

上記、表1に記載の症例3のようにA,C,E法とB,D,F法間では総コレステロール(TC)とトリグリセライド(TG)の測定値に対してLDL-Cとしての測定値に開きがあるため、キット間での測定値差が生じています。
 



◆異常測定値の事例 (問い合わせ事例) 

LDL-Cが低値で、HDL-CとLDL-C測定値の合計がTCHO値より大きく下回る検体の事例
(HPLCによるリポ蛋白質の分画と組成についての分析)

HPLC法(ゲルろ過)で分画したものをフラクションコレクターにて分取後、当社製品(TCHO-CL、TG-CL、PL-L、HDL-L、LDL-L)で各フラクション中の濃度を測定した結果を以下に示します。
フラクションNo.と測定値をプロットして、各項目のクロマトグラムを作成しました。

クロマトグラムの各ピークは通常のプール血清やリピッド-L(キャリブレータ)の場合、フラクションNo.25付近がCM、No.35付近がVLDL、No.40付近がLDL、No.45付近がHDLに相当します。
比較対照として実施した、健常人のプール血清のクロマトグラムはLDLとHDLに相当するフラクションに明瞭なピークが確認できました。

しかし、調査検体(A・Bどちらも)は正常な血清(プール血清)に比べ、リポ蛋白画分の成分比率を示す、クロマトグラムのピーク組成(TC、TG、PLの比率)が異なり、異常なリポ蛋白質であると考えられます。
また、溶出位置もHDLに相当するピークは確認できましたが、VLDL〜LDLに相当する部分に跨ったショルダーのある1つの大きなピークが確認されました。
このピークにはショルダーがあることから色々なサイズのリポ蛋白質の混在が示唆されますが、分離が不十分で1つに見えるため、ピーク中に存在するLDLの割合は判断できませんでした。

 
 各測定値
 
HPLC分析結果 
 

LDL-C測定値が基準範囲よりも低く、かつHDL-CとLDL-C測定値の合計がTCHO測定値よりも大きく下回った原因は、当社LDL-Lが異常なリポ蛋白と反応しない為でした。
HPLC法によるクロマトグラムの脂質組成分析結果から、調査検体のリポ蛋白質は正常ヒト血清のLDL-Cとは異なりました。

上記、検体A・Bでは粒子サイズが正常なLDL-Cよりも大きいために溶出位置が通常より前にずれています。検体AはTG-rich 、PL-richな組成で、肝機能検査の結果からも胆汁うっ滞の検体と推測されます。
一方、検体BはTG-rich な組成で濁りの影響を生じています。
TCHOクロマトグラムのピークに対して、当社製品LDL-Lで測定したLDLクロマトグラムのピーク比率は正常なLDLの場合より小さく、調査検体の異常なリポ蛋白質とは当社製品LDL-Lは殆ど反応しておりません。

この様に当社製品のLDL-Lは健常人血清と同じ溶出位置のLDLと反応し、Lp-Xの様にHPLC分析の溶出位置が早く、PL-rich・TG-richな異常リポ蛋白質とは反応しません。
ちなみにLp-Xは胆汁のうっ滞が解消し、肝機能が正常化すると消失します。
LDL-C測定の目的を高脂血症や動脈硬化疾患の病態を把握することとするならば、Lp-Xは測定しない方が臨床的混乱は回避でき、妥当であると考えられます。

調査検体のようにLDL-C測定値が正常値よりも低く、かつHDL-CとLDL-C測定値の合計がTCHO測定値よりも大きく下回った場合には、LDL-Lと反応しないTGやPLのrichな異常リポ蛋白質の存在が示唆されますので、胆汁うっ滞などの肝機能障害が疑われ、肝機能マーカー(ALP、T-Bil、γ-GT、AST、ALTなど)を追加測定することも必要と考えられます。


 
参考文献  
1)松嶋ら、異常リポ蛋白Lp-Xに対するLDL-Cホモジニアス法の反応特異性の研究
  (医学検査 Vol.59 No.1 38-43 2010)
2)汎用自動分析装置用LDL-コレステロール直接測定法における互換性の実態と実試料標準物質JCCRM224-2
  による校正効果の確認(筑波セミナー抄録集 p78 2008)
 

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